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「世界で最も幸せな国」コスタリカの小学校を訪問

そらべあ基金理事の箕輪弥生さんが今年の初夏にコスタリカの小学校を訪れました。その時の様子を2回のシリーズに分けてお伝えします。今回のレポートは第1弾になります。


 

「世界で最も幸せな国」コスタリカの小学校を訪問

コスタリカレポートその1 (そらべあ基金理事 箕輪弥生)

 

 

■軍事費を教育費に、教育が平和をつくる

2学年が同じ教室を使用。移民も多いので国籍も多様

日本からは少し遠い中米の小さな国、コスタリカをご存知でしょうか。面積はちょうど九州と四国を足したぐらいの小国ですが、「世界で最も幸せに暮らせる場所」としてこれまで何度も1位になり、世界で注目されている国のひとつでもあります。

その訳は、70年前から軍隊を持たない平和国家であり、再生可能エネルギーだけで電力をまかない、カーボンニュートラルを目指す環境先進国であること、そして地球上の生物種の5%近くが生息する生物多様性の豊かな国であることなど、さまざまな理由があります。でもそのどれをとってもたやすく実現できたわけではなく、しっかりした国の戦略とリーダーシップがあり、国民の努力もあって実現してきました。

そんな魅力あふれるコスタリカにある小学校を今年5月に訪問しました。
場所は、首都サンホセから約180kmエコツーリズムで有名なモンテベルデのセ―ロプラノ小学校。モンテベルデ周辺は熱帯雲霧林と呼ばれる独特の生態系の森が広がり、自然保護区は希少な動植物を見るために多くの観光客が訪れます。

歓迎の踊りは来訪者も最後は中に入れて踊った

セ―ロプラノ小学校は、昼間は小学生、午後からは中学生も利用するという小さなパブリックスクール。訪れた私たちを歓迎して子供たちが踊りを披露してくれました。そらべあの絵本やグッズも贈呈。同行したガイドさんがスペイン語で翻訳して説明すると、子供たちは本当に熱心に聞いてくれました。

そらべあの物語に聞き入る子供たちとエリック校長先生

今から70年前に平和憲法を作り、常備軍を廃止したコスタリカは「兵士の数だけ教師を作ろう」をスローガンに軍事費を教育費に充当してきました。平和憲法はあるものの、ここ数年で5兆円もの予算を投じて米国から武器を購入する日本とは異なります。

紛争の多い中米で軍隊をなくすことは非常に大きな決断だったと思います。同国では軍隊があり、武器を持てば問題を武力で解決しようとする、それはどれだけ軍事費を費やしても社会を破壊するだけになると考えたのです。

1980年代、コスタリカに隣接するニカラグア、エルサルバトル、グアマテラが内戦状態になった時も、当時のアリアス大統領は「積極的非武装、中立」を説いて内戦を終わらせ1987年ノーベル平和賞を受賞しました。

平和憲法を作る前のコスタリカは国家予算の約3割を軍事費に充てていましたが、それを
教育費に充てました。幼稚園から高校まで教育費は無料、識字率が98%ということからも教育の充実度がわかります。

■小学生から培われる民主主義の基本

教育システムについて説明するエリック校長先生

日本では政治についての教育はあまり盛んではありませんが、コスタリカでは小学生の時から政治を自分たちの問題としてリアルに学びます。

同小学校のエリック・サモーラ校長先生は「大統領選挙の前には小学生も模擬選挙をします。子供たちは自分が支持したい政党に分かれて、政策についてもディベートをします」と話してくれました。

もちろん、子供たちは自分たちの意見を決めるのに、先生や両親からも意見を聞きます。そういった対話が自分事として政治をとらえ、人権意識を小さい頃から育てて行きます。

教育でも、単に事実を暗記することではなく「何故そうなったのか」「どうしたら解決できるのか」など対話式の教育が多いとクラスの担任教師は説明します。

蜂が生態系の中でどんな役割をしているかを学ぶ

ここでは民事や刑事裁判だけでなく憲法裁判所があり、市民は誰もが人権や憲法に対する訴えを無料で起こすことができます。驚いたのは小学生でも違憲訴訟を起こす例があるということ。たとえば、学校の隣地に産業廃棄物業者が大量にゴミを捨てたことをとらえ、「臭いがひどくて校庭で遊べない」と小学生が訴え、裁判所は子供の学習環境を認めたこともあったそうです。

「憲法は飾り物でなく、自分たちのものとして使おう」という意識が教育により国民に広く浸透し、本当の意味での民主主義が形成されていると感じました。そして、首都サンホセには「国連平和大学」が作られ、紛争ではない平和への道筋を世界各国の若者たちが学んでいます。平和を担うリーダーを育てるにはまず教育だということをコスタリカは教えてくれました。

「日本はどこ?」の質問に子供たちは答えられず

*次回はコスタリカの豊かな自然、そしてそれを守るための努力、再生可能エネルギー100%の電力などを紹介します。
コスタリカレポートその2:「自然資本を重視し、自然エネルギーだけで発電するコスタリカ」