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北海道胆振地方 視察レポート

北海道胆振地方 視察レポート

2019年9月12日(木)、北海道札幌市での寄贈式典にあわせ、北海道の再生可能エネルギー活用事例を事務局スタッフで視察してきました。

<視察先>
(1)苫小牧市上下水道部 西町下水処理センター
(2)ウッドファイバー株式会社
(3)むかわ町役場 道の駅「むかわ四季の館」

(1)苫小牧市上下水道部 西町下水処理センター
そらべあ基金では、「自然エネルギーには太陽光や風力以外にも色々な種類があるよ」と子どもたちに環境教室で伝えています。今回は、様々な種類がある自然エネルギーのうち、バイオマス発電の一つである下水処理センターでの「消化ガス発電」の取り組みを見学させていただきました。


苫小牧市上下水道部 西町下水処理センター

昭和43年に運転開始したこの下水処理センターでは、市内3か所の下水処理センターで発生する汚泥をまとめて処理処分しています。その汚泥は、数回の沈殿を経て濃縮し、密閉して40℃ぐらいに温めるときにメタンガスなどが発生します。ガスを活用して施設内のボイラーや発電機の燃料に利用しています。同施設では、昭和50年代にこの消化ガス発電を導入。これは、国内2番目という先進的な取り組みでした。現在は、平成17年に導入した2代目が稼働しており、西町下水処理センターにおける使用電力の53.8%(一般家庭の約480世帯の電力量)を賄っているそうです。(平成30年度実績)


左から濃縮タンク(丸い屋根の建物)、消化タンク(同じ形の複数の建物)、ガスホルダ(水色の大きな建物)

国内の下水処理場での消化ガス発電の導入は、石油価格の下落や、設備維持の問題等であまり普及が進まない時期もあったそうですが、近年では地球温暖化対策などから、CO2の排出を抑えて施設内のエネルギーを賄えるということで、また注目を浴びているそうです。

そらべあ環境教室で、子どもたちに「水の出しっぱなしは地球温暖化と関係あると思う?」と質問をすると不思議そうな顔をしている子が多いのですが、きれいな水を作るためにはたくさんの電気を使うこと、そして、その電気を作るために地球温暖化の原因となるCO2がでいることを説明し、「水の出しっぱなしはやめようね」とお約束します。水をきれいにする下水処理工程のなかでも、特にエアレーションタンク内で微生物が汚れを分解するために必要な空気を吹き込む工程には、電気をたくさん使うそうです。


エアレーションタンク

ちょうど約一年前の2018年9月6日に北海道胆振東部地震が起き、同施設を含む地域も大規模停に見舞われました。約3日間、停電だったそうです。こちらの施設では非常用発電機を使って設備を稼働できたため、なんとか水の浄化は継続できたとのことです。

災害にそなえ、発電設備を分散して持つ社会にしていくことが重要だと感じました。また、その分散型発電設備がCO2を排出しない自然エネルギーにしていけたら、燃料の心配も少なくなりますし、地球温暖化防止にも貢献します。今後の環境教育の場で、この点について子どもたちに、伝えていきたいと思います。

 

(2)ウッドファイバー株式会社 北海道工場
次に、ウッドファイバー株式会社様を訪問しました。ドイツ企業のライセンスを取得し、木材繊維断熱材を生産販売されている会社です。2009年に北海道工場を竣工し、日本で唯一、ここだけで生産されているそうです。


木材繊維断熱材

この断熱材は高性能グラスウールなどと同等の断熱性能があり、住宅の省エネルギー化に大きな役割を担うと同時に、木質ならではの吸放湿性、吸音性、蓄熱性などにより快適な住空間を実現してくれるそうです。


屋根や壁などにいれて使います。


ゼロ・エネルギーハウスにも活用

工場ではバーク(樹皮)を燃料とするボイラーを使用し、化石燃料に極力依存しない省エネルギー生産をされているそうです。また、主に北海道産のカラマツやトドマツなどの針葉樹を使い、持続可能な木材利用による森林の活性化を通じて、地球温暖化防止に取り組んでいらっしゃるとのことでした。

そらべあ基金では、自然エネルギーの普及啓発という形で地球温暖化防止に取り組んでいますが、木材を適切に活用することや住宅の省エネ化でCO2削減を目指されており、同じ目的に向かっていると感じました。

 

3) むかわ町役場 町内施設「道の駅むかわ」
北海道勇払郡むかわ町は、道央圏の南方に位置し、日本の恐竜研究史上で最大発見といわれる約80%の全身骨格を有する完成度で発掘された「むかわ竜」で一躍有名になりました。

前出の地震では、むかわ町内は最大震度6強の揺れを観測、人的被害や建物被害が発生しました。現在は復旧から生活再建に向け復興への取り組みがはじまっていました。

今回私たちは、その復興を外から支える取り組みとして、移動可能型ソーラー充電スタンドが町に寄贈設置されたことを知り、災害時の非常用電源の確保に役立つ再生可能エネルギー製品の設置された現場を訪れ、町の災害状況や製品活用などのお話を役場の職員の方からお聞かせいただきました。この移動可能型ソーラー充電スタンドは、町民が集まる役場や総合支所、道の駅「むかわ四季の館」の食堂と温泉施設、穂別博物館の5ヵ所に設置され、太陽光発電により電気を活用できる移動型の充電システムです。今回の寄贈により緊急時に避難所へ設置し自家発電機能をもつ電源設備としての利用が期待されています。

当日は、製品開発に携わられた会社のご担当者様から製品説明の機会を得ることができました。端子が4口ありスマートフォンを1台5分として120台分程度の充電が可能。災害時では身近な人の安否確認の手段として携帯電話の充電ニーズは町民からも高いことが予想され、安心を支える再生可能エネルギーを活用した街なかのシティチャージという考え方や運用について、今後の可能性を感じました。

 


役場に設置された充電スタンドの前でシャープエネルギーソリューション株式会社の方から説明をうける事務局スタッフ


窓側が太陽光パネル・手前が掲示板に利用されている「道の駅 むかわ四季の館」の充電スタンド

今回、お忙しい中、視察を受け入れてくださった皆様、本当にありがとうございました!