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青森県六ケ所村の風力発電所を見学

青森県六ケ所村の風力発電所を見学

そらべあ基金 理事 箕輪弥生

 

青森県六ケ所村の日本風力開発所有の「二又風力発電所」

 

風況の良い青森県は、日本の中でも秋田県と並んで最も風力発電の盛んな場所。中でも六ケ所村は日本最大級の風力発電エリアです。ここには「そらべあ基金」が長年お世話になっている日本風力開発グループの風力発電所があります。これから日本でも拡大が期待される風の力を使った再生可能エネルギー、風力発電の現場を見てきました。

「そらべあグリーン電力証書」を生み出した「六ヶ所村二又風力発電所」へ

 

二又風力開発(FWD)の文字がナセルに

 

青森「十和田めぐみ保育園」の「そらべあ発電所」贈呈式典のために青森県を訪れたそらべあ基金の事務局スタッフと共に、10月末に青森県六ケ所村の風力発電所を見学しました。

ここには日本風力開発グループの「六ヶ所村風力発電所」、「吹越台地風力発電所」、「六ヶ所村二又風力発電所」があり、合わせて66基の風車が稼働しています。

六ケ所村は、西はむつ湾、東は太平洋があり、風の通り道。冬の季節風もあり風況は非常に良く、台風や落雷の被害もほとんどないので風力発電の好適地です。3つの発電所を合わせると10.3万kWの発電容量を持ちます。これは30万世帯以上の一般家庭で使用する電力使用量に相当するほどです。

丘に点在する「六ヶ所村二又風力発電所」の風車は近く行っても音も気にならないほどで、空に伸びるように風を切るブレード(羽)が自然の力で発電することの正しさを伝えてくれます。

 

 

六ケ所村の風力発電の環境価値を形にした
「そらべあグリーン電力証書」

 

この「六ヶ所村二又風力発電所」はこれまで、「そらべあグリーン電力証書」の環境価値を提供してくれました。風力発電など、自然の力を使って発電した電力(グリーンエネルギー)は、地球環境に負荷を与えないという環境付加価値があります。その環境付加価値分を証書という形にしたものが「グリーン電力証書」です。実際に「そらべあグリーン電力証書」を生み出してくれた風車を見て、感慨深いものがありました。

メンテナンスが風力発電の稼働率を高める

 

イオスエンジニアリング&サービスのトレーニングセンター

 

風車は太陽光発電と異なり、1日24時間、夜でも風が吹けば発電をしてくれますが、きちんと動いてもらうにはメンテナンスが重要です。今回、日本風力開発グループの風車の運転および保守管理を行っている子会社のイオスエンジニアリング&サービス(以下:EES)にも伺い、六ケ所事業所の竹田貴衛(たかもり)所長にお話をお聞きしました。

六ケ所村にあるEESのトレーニングセンターに入ると、まずゼネラルエレクトリック社(GE)製の風車のナセルの実物がど-んとあります。ナセルは一般的に風力発電の発電機や増速機、制御機器などが納められた風車の心臓部です。

 

ナセルには、風車のブレードを取り付けるところもある

 

現在、風力発電施設では車の車検のように3年に1度定期的な安全検査を行う決まりがあります。そのための点検には地上65mの高さにあるナセルに上ってさまざまな点検や作業をしなければなりません。

「作業員は1度ナセルに上るとトイレの時以外は降りてきません。昼食もこの中でとります」と竹田所長が説明します。冬は零下の気温になり、季節風が吹く地上65メートルの高さの寒さでの作業は想像を絶します。

 

EES六ケ所事業所の竹田貴衛 所長

 

さらに、風車に特化した安全に関する対応を習得するための訓練も必要とされていて、そのためのロープワークや救助活動の訓練も行われます。GWO (Global Wind Organisation)が認定した訓練が行えるさまざまな訓練器具がそろっています。

ブレード(羽)の修理などはロープワークで行われることもあるとのことで、危険と隣り合わせのメンテナンス作業が風力発電を支えていることが実感できました。

隣接する事務所では、24時間体制で全国の風力発電施設を遠隔監視しています。ずらっと並んだモニターはリアルタイムの発電量だけでなく、何か風車の不具合があるとすぐにわかり、風が強すぎる時などは制御も行います。

 

24時間ここで風車を監視する

 

今後は近隣のむつ湾に洋上風力発電の計画もあり、ますます風車のメンテナンス需要は高まると思われますが、「人材確保が課題」(竹田所長)となっています。日本でも、さらにクリーンなエネルギーである風力発電に興味を持つ若者が増えることが望まれます。

化石燃料、核燃料から自然エネルギーまで並ぶ「六ケ所村エネルギーパーク」

 

メガソーラーと風車が仲良く並ぶ
「六ケ所村エネルギーパーク」

 

今回見学した風力発電所のある六ケ所村は、風車が並ぶウインドファームだけでなく、メガソーラーから原子燃料サイクル関連施設、国際核融合エネルギー研究センター、石油備蓄基地まで、エネルギーに関する施設が集まっている非常に稀有な場所です。「六ヶ所村次世代エネルギーパーク」と名付けられ、一般の人でも見学ができます。

石油備蓄基地は国内消費量の 1 週間分の原油を蓄える備蓄基地。広大な敷地内に遠い海外から運ばれた石油が入った巨大なタンクが51基立ち並んでいます。

 

巨大な石油タンクが続く「むつ小川原国家石油備蓄基地」

 

そしてEESのすぐそばにあるのが日本原燃による使用済み核燃料再処理工場。全国の原子力発電所から使用済み核燃料が集められ、ウランやプルトニウムを取り出して、再利用を目指す再処理工場です。

「目指す」としたのは26年たってもまだ再処理プロセスは完成せず、24回もの完成延期を繰り返しているからです。現在も安全対策の強化のため多くの人が働いていて、夕方の帰宅時には大型バスが何台も出て周辺が渋滞するほど。再処理工場とMOX燃料*を完成させるために使った費用はすでに約16.2兆円(2017年日本原燃発表)にのぼります。この費用はすべて原発を持っている電力会社が負担しています。

再処理工場にあるプルトニウムの量もすでに3.6トン。これは無害化されるまでに約10万年かかると言われる(資源エネルギー庁)非常に危険な物質です。

 

「核燃料サイクル」を目指す六ヶ所再処理工場の一部

 

枯れることのない自然の恵みである風や太陽の力を使った自然エネルギー施設の隣りあわせにある核燃料再処理工場や石油備蓄施設を見て、未来の子供たちに残すべきはどのようなエネルギーなのか、深く考えさせられる場所でした。

※MOX燃料:使用済燃料の中に含まれたプルトニウムとウランと混ぜ合わせた燃料