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第6回 そらべあ再生可能エネルギーセミナーを開催

そらべあ基金の設立10周年を記念して、6月15日(金)、第6回目となるそらべあ再生可能エネルギーセミナーを実施しました。

今回のテーマは「日本の主力電源となった再生エネルギー最新動向について」。世界の再生可能エネルギー(以下 再生エネ)の現状や、日本の第5次エネルギー基本計画で再生エネが主力電源と明記されることで、どのような変化やビジネスチャンスが生まれるのか、今一番知りたい最新動向について、日本再生可能エネルギー総合研究所 代表の北村和也氏による講演とそれに続くトークセッションで参加者と共有しました。

日本再生可能エネルギー総合研究所 代表 北村和也氏

 

第一部の北村氏の講演では、まず世界の再生エネの現状についてお話しいただきました。それによると、2017年の再生エネの割合は世界で23.5%、再生エネによる発電の施設容量は2000GWを超えています。日本は2030年までに電源構成のうち再生エネを22~24%程度にする目標を掲げていますが、世界全体ではもうすでにそれを達成しています。たとえばドイツでは、2050年には8割の電気を再生エネにしようという政策目標があり、それに向けての課題解決が論議されているほどです。

再生エネが世界で普及している背景には、再生エネ価格の劇的な下落があります。太陽光発電はここ7年で73%、陸上風力も25%下落し、すでに化石燃料を使った発電と遜色のない価格が実現されつつあります。中でもVREと呼ばれる太陽光や風力などの可変的再生エネは原料費がかからないエネルギーとして最も注目されています。VREによる発電はまた電気自動車(EV)の拡大を後押しし、燃料費のいらない車として交通分野のエネルギー革命も引き起こしています。

各地の地域エネルギーの立ち上げにもかかわる北村氏

 

資源を持つ地域がエネルギーの主役に

このように世界でエネルギーの主役になりつつある再生エネですが、北村氏は日本でもこの影響を受けずにはいられないと強調します。これは第5次エネルギー基本計画で再生エネが主力電源と明記されたことで更に大きく動きつつあります。

たとえば「RE100」という再生エネだけで企業運営をしようとする企業は、日本企業7社を含む130社以上が目指しています。さらにRE100に参加した企業はサプライチェーンにもそれを求めるようになってきています。つまり、日本でも再生エネで企業運営をしないとものづくりができなくなり、生き残れない時代になると話します。

さらに、再生エネが普及する上で課題となることが逆にビジネスチャンスを生んでいくと北村氏は指摘します。これは、たとえば変動のある再生エネを安定的に供給できるようにするには、蓄電や需給調整が求められます。蓄電池はもちろんEVとの連動や水素、揚水発電など多様なエネルギー貯蔵方法が拡大しそうです。

 

そして、再生エネの主力電源化が進むとエネルギーの分散化が進みます。つまりエネルギーはそれぞれの地域が考える時代になると北村氏は予想します。これまで遠い国に流失していたエネルギー費用が、地域で作り出し、消費することにより地域で経済が循環し始めるのです。

現在、地域や自治体が主役となったエネルギー会社が日本でも注目され始めています。再生エネが豊富な地域は、RE100のような再生エネ電源の調達をしたい企業誘致にも有利ですし、雇用を生み、ドイツのシュタットベルゲ(*1)のようにさまざまな住民サービスと連動することも可能です。つまり資源をもつ地域がエネルギーの主役になる時代がやってくるのです。

トークセッションでは再生エネと金融についても話し合われた

 

後半のトークセッションでは、そらべあ基金の冨田秀実 代表理事もESG投資(*2)など環境や社会課題をとらえた投資が活発化している今、再生エネは事業経営の要としてとらえる必要があると指摘しました。

「グローバルに考え、ローカルに行動する」これは北村氏が講演の最初に掲げた言葉です。再生エネが世界の主役となりつつある今、私達が暮らす地域や各企業、NPOも、しっかりと世界と連携した動きを作っていかなければと感じるセミナーとなりました。

セミナー懇親会の後、参加者の皆さまと記念撮影

 

*1シュタットベルゲ:ドイツにおいて、電気、ガス、水道、交通などの公共インフラを整備・運営する自治体所有の公益企業(公社)。ドイツ国内における電力小売の2割を担う。
*2 ESG投資:環境、社会、企業統治に配慮している企業を重視する投資の考え方