お知らせとレポート
69基目のそらべあ発電所が完成
~大阪府堺市 幼保連携型認定こども園 登美丘西こども園~
2020年1月21日、大阪府堺市の社会福祉法人堺ひかり会 幼保連携型認定こども園「登美丘西こども園」に69基目となる太陽光発電設備「そらべあ発電所」が完成しました。第50回そらべあスマイルプロジェクトでは、全国の応募園から「登美丘西こども園」を選考し、ソニー損害保険株式会社様のご協賛により寄贈を決定しました。同社による「そらべあ発電所」の寄贈は26基目となります。
登美丘西こども園は2005年に設立、住宅地に立地し、約150名の園児さんが通う園です。これまで10年間にわたり、大阪大谷大学教育学部 幼児教育実践研究センターと共同で幼児期の環境教育活動の実践研究を実施されてきました。
本プロジェクトへの応募書類には、研究論文『子どもと自然・命のつながりを知る 保育実践のあり方を探る』が添付されていました。とても素晴らしい取り組みに注目していたところ、今年2020年9月、これまでの研究実践をまとめた『持続可能な社会をめざす0歳からの保育 ―環境教育に取り組む実践研究のあゆみ― 』 (井上美智子・登美丘西こども園の共著/北大路書房)が発刊されたお知らせをいただきました。このような園に、そらべあ発電所が設置できたことを嬉しく思っております。
応募動機には、2018年に環境方針を策定したことによる、環境活動の更なる推進に向け太陽光発電設備を設置し環境教育を意義あるものにしたい、とありました。また、太陽光発電設備の具体的な活用方法には、子どもたちに関心の高い太陽・空気・風・雨・湿度などの自然事象を更に踏み込み、太陽は暖かい・暑い・明るい・植物の成長に必要というだけなく、電気というエネルギーにも変わることを園生活で子どもたちに実感してもらいたい、発電量が確認できれば年長児の当番活動にも取り入れたいなどの動機や活用が具体的に記されており、今後のそらべあ発電所としての環境教育活動への期待を寄せています。
自然環境教育というと、森に囲まれた豊かな緑や広々とした園庭を想像します。しかし、同園は都市部の住宅地に立地しながら、自然を感じることができるよう数々の実践を工夫されています。
主な具体例
・グラウンドだった園庭を保護者や子どもたち地域の方々と協力し、自然の里山を目指して造成し生き物がたくさん生息するビオトープ育成活動
・子どもの主体性にあわせ「五感」や「つながり」を意識し、経験の数や種類より1つの経験を深く豊かにする保育者による援助活動
・稲作係、エコ・マネジメント係、園庭係、カリキュラム・マネジメント係、玄関ホール係、菜園係など、全保育者が環境教育活動に携わる活動
・全保育者による定期的な事例研究会を実施し、自己評価と振り返り学習で学び合う組織の運営活動
これら一連の取り組みにより、環境教育活動の実践を支えてきました。
2019年夏、そらべあ基金の事務局スタッフが同園を訪問したところ、園庭のビオトープで生き物を観察する活動をされていました。
蝶の幼虫を入れた虫かごをもつ先生の周りに、子どもたちが集まり座ってお話を聞いています。先生が、「幼虫はこれからどうなるか」と質問をすると、子どもたちは自由に答え、興味津々で虫の様子をじっと見ていました。園では「虫は捕まえるものではなく、観察したら元いた場所に戻しましょう」と伝えているとのことで、子どもたちは日々の活動でそれらが自然に身についている様子でした。
また、同園では、「ただ自然体験をすればよい」や「リサイクル活動に参加させればよい」という捉え方はせず、子ども自らが発する自然への興味・探求心を保育者が促しながら、身近に自然を感じ「自然が大好き・大切にしたい」と思う豊かな感性を育むことを目指しています。そのため、園の活動全般に幼児期の環境教育の観点を染み込ませ、子どもの会話や行動の変化、年齢別の変容を記録しています。工夫された活動は他園でも参考になる実践であると思いました。
今春、工事が終わった同園で寄贈式典を行うべく準備をすすめておりましたが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により全国的にも緊急事態宣言が発令され、ソニー損害保険株式会社様をはじめ関係者間と協議を重ねました。そして、関係者の健康や安全面を第一に考慮した結果、大変残念ながら今回の寄贈式典は中止を決定することとなりました。そこで式典を行う代わりに園児の皆さんへ記念品を贈呈いたしました。北極で暮らすホッキョグマ兄弟の「そらべあ」の物語を通じて、地球温暖化についてご家庭でもお話をしていただき、エコな行動につなげていただけたら大変嬉しいです。
0歳から2歳児の皆さんへの寄贈記念品
3歳から5歳児の皆さんへの寄贈記念品
長雨が続く晴れ間の1日に寄贈を記念した写真撮影会を行っていただきました。園による手作りの看板と皆さんの素敵な笑顔の写真も届きましたのでご紹介します。大変ありがとうございました。
今回の「そらべあ発電所」の寄贈をきっかけに、どのような園活動に広がりそうかを大仲美智子さん(2020年3月まで同園園長)に伺いました。
―当園では、子どもたちに電気や水の無駄遣いをやめたり、食事の材料は肉であれ野菜であれ「命を頂いている」ことを考え、よそった分は残さないで食べるように実践しています。新型コロナウイルスのため登園自粛していた子ども達も揃い始めた後、ソーラー発電の記念品を頂き改めて電気が発電する仕組みを知る機会となりました。ありがとうございます。保護者からも良い記念品で良かったと喜んで頂いています。―
園での「幼児の環境教育」実践活動から、他園やご家庭でも取り組みやすい活動や工夫などについてアドバイスもいただきました。
―最初の出だしは「自然に親しむ」から始まります。園庭に木が沢山なくても、街路樹でもプランターでも良いのです。植物が無いから環境教育はできないのではありません。0・1歳児は「あっ!あっ!」と何か発見したら保育者に伝えようとします。見逃さずに「きれいなお花だね。いい匂いがするね。」などのその場に応じた共感の言葉を伝えます。2~5歳児は子どもからの問いかけに知っていてもすぐに答えを教えず、「なぜだろうね?」と子どもの気づきを待ち、見守って下さい。そして、保育者がまず自然に興味を持つように努力して下さいね。―
今後の園での取り組みが更に深まり、豊かな活動となることを期待しております。
最後に、登美丘西こども園の皆さま、ご協賛いただいたソニー損害保険株式会社の皆さま、ご協力いただきまして大変ありがとうございました。
第69基目寄贈園 大阪府堺市 登美丘西こども園
撮影:株式会社 河方写真館(大阪府堺市)