お知らせとレポート
みんなでチャレンジ!エコアクション
~昔ながらの生活を大事にすることが、
環境を大切にすることに繋がる~
「そらべあ発電所」を設置した全国の幼稚園・保育園・こども園では、園児さんと様々なエコアクションにチャレンジされています。
どんな活動をどのように取り組み、どんな変化がうまれたのかを先生へインタビュー。
素敵なエコアクションを全国に広げるためにご紹介していきます。
今回お話を伺ったのは、東京都葛飾区にある東江幼稚園 浅井 正信園長 (2008年寄贈)。同園は記念すべき「そらべあ発電所」第1基 寄贈園です。インタビューのために訪問させていただいた日は生憎の雨模様でしたが、15年経った今もソーラーパネルは元気に発電をしてくれているそうです。自然の営みを大切にした保育をされており、お日様の力で作られた電気のありがたさを日々子どもたちにお話ししてくださっているそうです。
園舎の屋根に設置されたソーラーパネル
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子どもがワクワクするような魅力的な園舎
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園舎内部は温かみのある木造と珪藻土で作られている
— 一年を通し、季節に合わせた自然の営みを大切にする様々な活動をされていますが、その想いや運営の工夫など教えてください。
SDGsというと新しいことのように感じてしまいますが、昔から日本でやってきたことを確認していくことが、環境や生活を大切にすることに繋がるのではないかと思っています。
幼稚園は教育もしているけど、生活もしているので、教育と生活を切り離すのではなく、季節に合った生活をしながら、その中に教育を取り入れています。
例えば、4月に田植えをして終わりではなく、9月に稲刈りをし脱穀も体験、その後、おにぎり作り、餅つき、稲の藁でしめ飾りを作るといった季節に沿って一連の活動を行います。また、昼食時に床にこぼしてしまった食べ物を園で飼っているニワトリに食べてもらい、子どもたちはニワトリからたまごをもらっています。
自分達も自然の循環の一部であるということを感じてもらう活動を大切にしています。
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お弁当の食べこぼしは無駄にせずニワトリの餌に活用
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園庭で孵化したしニホンイシガメの赤ちゃん、トコトコ歩いていたそう
— 昔ながらの活動(しめ飾り作りなど)を、園ではどのように若い先生たちに受け継いでいるのですか。
私自身が幼少期に自給自足の生活をしていたという経験がありまして、その時に農家さんに教えてもらったことが基になっています。また職員の中にも子どもの頃、実家の田んぼで稲を育てていて、しめ飾りの作り方を知っている者がいるので、本から学ぶというわけではなく、出来る何人かが中心になって教えています。
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保護者も一緒にしめ飾り作り
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種まきから、田植え、稲刈りと育てた稲で作ったしめ飾り
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幼稚園で育てたお米で作った鏡餅
— 様々な活動をされていて中には危険な活動もあると思うのですが、保護者の理解を得るための工夫や安全対策などはどのようにされているのですか。
例えばツリーハウスは、高さ7メートルほどあります。子どもたちが登った時に2階建ての屋根が見渡せたら嬉しいだろうなというくらいの高さに造られています。しかし、落ちて命を落としてしまうことがあってはいけないので、段階的に挑戦出来る環境を用意しています。いきなり一番高いものに挑戦するのではなく、落ちたら痛い、落ちたらちょっと怪我をする、落ちたら怪我をする、といった段階的な高さの遊具を用意し、少しづつ危険を体験することで対応する力をつけ大きな危険を減らせると考えています。保護者にもこの考えを説明しご理解をいただいています。また保護者の見守りボランティアもあり、子どもたちがツリーハウスに登って目を輝かせている様子を見ることで、保護者の理解も深まっているように思います。
また、年長児から薪を割って、マッチで火をつけ、かまどでご飯を炊くということをしています。年少・年中児はやってみたいという想いを持って楽しみにしています。火も鉈(なた)も包丁も危ないものなので教えるときに注意を払いますが、言葉で伝えるだけでなく体験を通し、人の話をしっかり聞く、注意して取り組む大切さを学んでもらいます。
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7mほどの高さにあるツリーハウス
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(手前)ロープで登る練習が出来る遊具
(右奥)ツリーハウスよりは低く設計された遊具
― 夏の暑さ対策はどうされていますか。
園庭には木がいくつかあるので木陰の下で遊んでいます。井戸水を有効活用して、「ちょろちょろ小川」と名付けた小さな水路に井戸水を流し足を冷やしながら遊んだり、木と木にホースを吊るし井戸水のミストが出るようにしたりしています。
子どもたちに水道水の出しっぱなしと井戸水の出しっぱなしの違いを教えるのは難しく、手動の井戸水ポンプを使って自分の力で水を出して、終わったら止まるということをわかってもらえるようにしています。自然の恵みの大切さを知ってもらうことで、環境のことを考える素地にはなるのかと思っています。
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井戸水を流す「ちょろちょろ小川」
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木から木へ吊るした井戸水ミストが出るホース
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手動で水を出す井戸水ポンプ
― 貴園の保育活動を通し、子どもたちにどういう力が育っていると思いますか。
異年齢保育の影響もあってか、小学校に進学してから、人と関わることが上手と言われることが多いです。また園庭で体を使った遊びをすることが多いので、運動が得意な子が多いですね。
― 保護者が関わる機会が多いように感じますが、どのような活動がありますか?
PTAはありますが、あとはその時々に応じて有志でお手伝いをお願いしています。
ツリーハウスの見守りもですし、土日に田んぼの草取りをお願いすることもあります。家族で参加していただき、子ども達は田んぼの周りでカエルを追いかけ、泥遊びをして遊んでいます。
また、当園は送迎バスなしの徒歩通園、毎日お弁当で保護者にとっては大変なこともあるかと思いますが、ご理解いただいております。
保護者サークルもありまして、子どもを送った後、園内の施設を使って自由に活動してもらっています。陶芸や木工、染め物、リコーダーなど13サークルあります。
毎日の送迎や行事、サークル活動などを通し保護者同士が顔を合わせる機会が多いため、保護者の横の繋がりが強いように感じます。卒園しても保護者の交流が続いているようです。
また、卒園後も幼稚園と関われる機会を設けたいという想いから「おにぎりクラブ」という活動を行っています。小学生までの卒園生が集まって、園庭で煮炊きをしたり、遊んだりしています。幼稚園時代に登れなかったツリーハウスに登れるようになって喜んでいる子もいます。
春に花まつり同窓会というお釈迦様のお誕生日をお祝いする会があり、先日は6歳から28歳の卒業生が集まり、28歳も真剣にゲームに参加していました。
関わりたい人には関われる機会がある園だと思っています。
こちらは保護者が数年前に作ってくれた新入園児募集のポスターなんです。キャッチコピーの「めんどくさい幼稚園」が驚きですが、サブコピーの「だけど、足を踏み入れる価値がある」との組み合わせで、伝わるのではと思っています(笑)。
取材当日、ポスターを作成された保護者の方がサークル活動で園にいらしておりお話を伺うことが出来ました。
【保護者インタビュー】
― 東江幼稚園へ入園してよかったことは、どんなことですか。
・上の子は卒園したのですが、ひらがなや算数といった知識教育をやらず、幼稚園時代たくさん遊んだからこそ、小学校に進学し文字を学べることが嬉しいと主体的に勉強に取り組んでいます。
・幼稚園時代の行事や活動が経験となって、自分たちで遊びを作り出すことが上手で、草や土があればどこでも遊べます。例えばしめ飾り作りを経験したことで、草を編んで遊んだりしていますね。
― 新入園児募集のポスター「めんどくさい幼稚園」は保護者の方が考えて作ってくれたそうですが、どんな想いで作られたのですか。
・毎日お弁当を作り、送迎バスはなし、育てたお米は薪を割って火おこしをして炊くなど、今の時代やらないようなこともやって、めんどうくさいですよね。だけれども一生の思い出になると思っています。
・世の中が便利になりすぎているから、敢えて手をかけてやる、それが出来る環境が東江幼稚園にはあります。
・園長先生は当たり前のようにやっていることでも、今の時代、経験出来ないような昔ながらの活動を取り入れてる園はそんなにないと思うんです。東江幼稚園はそれらの活動や想いをしっかり伝えていくべきだと思い、ポスターを作りました。
・園長先生は常に子どもを一番に考えてくれるということが前提にあるので、どんな時も園長先生の意図を考え、子どものためなら協力しようという思いになります。
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園長先生(左奥)とお話を伺った保護者のみなさま
また、他の保護者の方からもメッセージをいただきました。
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「東江幼稚園は、子ども達はもちろんですが、母たちも一緒に育ててもらいました。みーんな根っこは東江にあり、という感じです。今も母たちの繋がりは深いです。」
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ツリーハウスをバックに、浅井 正信園長
園長先生と保護者の方々の素敵な関係性を拝見し、地域に親子に愛されている幼稚園だと感じることができ、とても温かい気持ちになりました。同園で人と自然と関わりながら学んださまざまな経験を活かし、人も自然も大切にしようという気持ちが子どもたちに育っていってくれるとよいですね。
貴重なお話をいただきました浅井園長先生、突然の取材にも快くご協力いただきました保護者のみなさま、ありがとうございました。
みんなでチャレンジ!エコアクションとは?
そらべあ基金では、そらべあ発電所を寄贈した園での様々なエコアクションなど環境教育活動のアイデアやヒントをご紹介しエコアクションの更なる活性化につなげたいと期待しています。
今回の取材・記事化は、日本風力開発株式会社のご協賛により実施いたしました。どうもありがとうございました!